「おつかれさまです。お先に失礼します」



まわりに声をかけ、バッグを持ってオフィスを出る。



「宇佐美さん、珍しく早いね。

なになに、デート?」



最近結婚して、もうすぐ寿退社をする吉岡さんが、にんまりとしながら声をかけてきた。


私は苦笑いを浮かべて「ちがうよ」と即答する。



「久しぶりに会う友だちと、飲みにいく約束してるから。

まだちょっと仕事のこってるんだけど、明日がんばる」



「なあんだ、友だちかあ。

楽しんできなね、二日酔いにならない程度に」



しっかり釘を刺されてしまったので、私は眉をあげて「はーい」と答えた。





「真子! こっちこっち」



待ち合わせ場所にした駅前のコンビニに近づくと、香苗が大きく手を振っていた。



駆け寄って、「おつかれ」と声をかける。



「ごめん、待たせちゃった?」


「ちょっとね」


「えっ、ごめん!」


「いいよ、仕事早めに終わったから、早く来すぎただけだし」


「待ちくたびれなかった?」


「ううん、ぜんぜん。今はスマホがあるから、待ち時間なんて苦じゃないよ」


「あー、そうだね。うちらが若い頃はケータイなんて………」



そんな話をしながら、行きつけのイタリア料理のレストランに向かう。