「そうだ」



私をまるで守るかのように、冬斗が前に行く。



そして、じっと卑弥呼を見て、言う。




「…じゃあ、わっちもうかうかしてられんな」



「本当は知られたくなかったけど…しょうがない。

もう、俺達は揃ったよ…


圧倒的だった力の差も、格段に埋まった…もう、お前達に好きにはさせないからね」




まるで、挑発するかのように。



冬斗はにやり、と片方の唇を上げて笑った。



けど、卑弥呼も負けてはいない。



彼女が両手を上げると、透明の壁の外、風が吹いて、浮いていた本達が一斉に床に落ちた。



…つまり、風が止んだということ。




この風を操っていたのは…紛れもなく、彼女だ。



卑弥呼…



スサノオ一派の1人…春の玉を持つ者…!




「残念ながら、お前が用のあった春乃はここにはいないよ。

多分狙ってきたんだろうけど、ついさっき出て行ったばっかりみたいだ」




「ふん…面白いことになったからな、あの子に伝えようと思っただけだ。

あの子が無理なら…そうだな、

お前らに、あの子に伝えておいてくれないか…?」




壁の向こう、卑弥呼がふふっと小さく笑った。



彼女の妖艶なその姿に見惚れそうになる。



けど、それが毒牙であることに…惑わさないからね!絶対!




「『桜がお前を探して高天原に迷い込んだ』…そう伝えておけ…



…では、来るのを楽しみにしているぞ…四季の力を、見せてもらおうではないか」