「…秋奈、大丈夫?」



ぽん、と肩に置かれた手に、びくっと体が動く。



「…大丈夫」



血は、大丈夫なの。
けど…


人が死んでいく姿を見たら、
嫌なことを思い出す。



頭に映る映像を振り払うように、首をぶんぶんと横に振る。




「…確かに今のは見てて気持ちいいもんじゃないよなー」



「…違う…


……大丈夫だから、2人とも。
早く、行こ」





違う、という言葉は小さすぎて。
2人には聞こえなかっただろう。



でも、その方が私にとっては良かった。



屋敷にはいる時、必然的に床に転がる彼の体を見なきゃいけない。




ちら、と見ると…


…やっぱり、なぜか…優しい顔をしている。




生気のないような、戦っている時の目からは想像がつかないほど、
とても優しい顔だった。




奥の方へ行くに連れ、2人が速度を遅くするのが分かった。

きっと警戒してるんだと思う。



私も2人に連れて、段々ゆっくりとした歩みにする。



「…確か、佐保邸の見取り図を見るからに…こっちだったよな?」



「うん…

あ、見えてきた」




2人が目指している場所は、分かっている。

作戦会議をした時、教えてくれた。



佐保邸には、それはそれは大きな広間があるらしい。


屋敷の中心に位置するそこ以外に位置する部屋では、戦いなんてできない。



そっと、大広間らしき部屋に…夏樹が一歩入っていった。



きっと、卑弥呼は…




「…おや、やっと来ましたか」




そこに。