季節が過ぎた。
年は回り、新しい期待に胸膨らむ時期がやってきた。
もう二年も前から彼に片思いしていることになる。
ずっと初めと同じ熱いままではいられなかったけど、今だになくならないこの気持ちは燻り続けている。
ふとしたことで、まだ。
未練がましく彼を思い出す。
反芻する度に鮮度を増す記憶はたちが悪い。
忘れようと目を閉じても、瞼の裏にさえ現れて、何度も私に彼を思わせる。
あのぶっきらぼうな魔法使いが好きなのだと自覚させて仕方ない。
渡されたカイロはいつまでも捨てられないままで、固く冷たくなって机の引き出しに眠っている。
「じゃあねー」
「うん、また明日」
友達と別れて早歩きで進む。
勉強していたら予想外に遅くなってしまった。
夜は近い。
空はとっくに星が瞬いて、冷気は次第にその温度を下げている。
……早く帰らなきゃ。
マフラーを掻き上げた手を手袋越しに擦り合わせる。
一層早くなる足を止めるように、どんっ、という一際痛そうな鈍い音が聞こえた。
大きく響いた衝突音に、通行人が一斉にそちらを向く。
男子高校生が一人、尻餅をついて呻いていた。
年は回り、新しい期待に胸膨らむ時期がやってきた。
もう二年も前から彼に片思いしていることになる。
ずっと初めと同じ熱いままではいられなかったけど、今だになくならないこの気持ちは燻り続けている。
ふとしたことで、まだ。
未練がましく彼を思い出す。
反芻する度に鮮度を増す記憶はたちが悪い。
忘れようと目を閉じても、瞼の裏にさえ現れて、何度も私に彼を思わせる。
あのぶっきらぼうな魔法使いが好きなのだと自覚させて仕方ない。
渡されたカイロはいつまでも捨てられないままで、固く冷たくなって机の引き出しに眠っている。
「じゃあねー」
「うん、また明日」
友達と別れて早歩きで進む。
勉強していたら予想外に遅くなってしまった。
夜は近い。
空はとっくに星が瞬いて、冷気は次第にその温度を下げている。
……早く帰らなきゃ。
マフラーを掻き上げた手を手袋越しに擦り合わせる。
一層早くなる足を止めるように、どんっ、という一際痛そうな鈍い音が聞こえた。
大きく響いた衝突音に、通行人が一斉にそちらを向く。
男子高校生が一人、尻餅をついて呻いていた。