それからは、約束の通りに、朝も一緒に登校することになった。


「おはよ、美里」

「おはよ、そうちゃん」


そんな朝七時。


「美里、弁当持ってきた?」

「持ってきた。どこで食べる?」

「じゃあそのへん」


そんなお昼休み。


「美里、帰ろう」

「うん」

「行くよ」


そんな夕方。


「じゃあ、また明日ね」

「ん。また明日」


そんなオレンジ色の時間。


「おやすみ、そうちゃん」

「おやすみ、美里」


そんな、夜遅く。


ほのかに変わった一連の流れを、懸命に抱きしめる。一日一日を丁寧に積み重ねる。


きっかけはだいぶ駄目駄目だったけど、日常になった声がけが、とても大切で愛おしい。


朝、冷えた空気を吸い込んで、淡い青空の下を歩くこと。


昼、混み合った食堂を抜けて、近くのベンチに並んでお弁当を広げること。


夕方、今までと変わらないオレンジ色の横顔に、あおるココアに、揃う足音に、じわりと感慨がにじむこと。

交わされた約束に、次がある安堵と喜びを噛みしめること。


夜、窓の外にもれるお隣の灯りを見ながら、一日をそうちゃんと締めくくれること。