「純白の相手は先輩だけじゃないと思う」


杏里は……一体何を言っているの?


あたしはキョトンとした杏里を見つめる。


「純白は可愛いし、素敵だし、きっと他にも釣り合う人がいる」


「杏里……なにが言いたいの?」


「あたし前から思っての。純白は気が付いてないかもしれないけれど、純白ってすごく……」


杏里の言葉を途中で遮るように、頬を打つ音が教室に響いていた。


杏里が驚いたように目を見開き、自分の頬を押さえてあたしを見ている。


「え……」


一瞬間をおいて、あたしは自分の右手が杏里の頬を打った事に気がついた。


「杏里……ごめっ……」


そう言うより早く、杏里はあたしの前から走って行ってしまったのだった。