オフィスのくすり

「そうか。
 遠方に居るのに、わざわざ金だけふんだくられて、誰としたのかもよく知らなかったからな」

「ていうか、そんな話してたっけ?」

 彼氏が霊が見えるなんて話、他人に語ったりしなかったと思うのだが。

 いつしゃべったのだろうと訊いてみる。

「いつか酔ったとき、べらべらしゃべってたぞ。

 内緒にしてるつもりだったのか。

 お前は、俺と一緒のプロジェクトには入れないようにするよ」

 つくづく一言余計な男だった。

 これが離婚の原因か? とちょっと思った。

「ところで、この不気味な女の写真はなんだ?」

 何かの企画か? と言う。

「知らないわ。

 送信元は……あら、ちゃんと番号出てる。

 ってことは、嫌がらせじゃないのかしら」

 しばらくすると、またFAXが届いた。

 音がしている間、無言で見つめる。

 また女の写真だった。

 吐き出されたそれをとって見た私は眉をひそめた。

「なんか……大きくなってない?」

「そうだな。
 さっきと比べて、頭が切れてるし」

「これって、どっかの事務服?
 OLさんかな?」

 FAXに映っている女は、肩につくかな、という長さの髪をしていた。