ナニカ 〜生んで、逃げて、殺される物語〜




人間誰でも嫌な面を1つや2つ持っていて当たり前だと思うけれど、絵留のズルいところは嫌い。


それがなければ絵留のこと、もっと好きだったろうし、絵留と仲違いしている今の状況を、私はもっと悲しんでいたんだろうな……。


空になったお弁当箱を鞄にしまう。

午後の授業が始まる前には、一泊キャンプについての大筋が決まった。


場所は、三日月湖キャンプ場。

持っていく物のリストや、食材買い出し班、会費も決めた。


そして日にちは、夏休みに入ってすぐの7月28日から一泊で……。

この日に都合の付かない女子が、2人いた。


クラス委員の渡辺くんが、すまなそうに2人に言う。


「田中さんと山本さんは、ごめんな……」


「いいよ、気にしないで」


「誰かに合わせたら、誰かの都合が悪くなるのは仕方ないよ。私は平気だから、みんなで楽しんできてね」



2人だって行きたいはずなのに、我慢して笑ってくれている……。


絵留はこの2人のことをどう思っているのだろうと、ついじっと見てしまった。


「霞、睨むのはやめた方がいいと思うけど……」


梨沙に注意をされ、慌てて視線を和らげた。