ナニカ 〜生んで、逃げて、殺される物語〜




また絵留の自己中心主義的なワガママが出たよ……そんな気持ちでいたら、絵留が続けて言った。


「あ、私のためだけに、そうしてもらいたいんじゃないんだよ?

部活で合宿のある人とか、お盆休みで田舎に帰る人とかいると思うから、夏休みに入ってすぐの方が参加者が多いと思うの」



今絵留が付け足した言葉は、自分のワガママをごまかすための後付けで、それに気づいているのは、きっと私と梨沙と琴美だけ。


琴美は今はもう絵留と2人組みになっちゃったから、わかっていても非難はしないだろうけど、私と梨沙は呆れた視線を絵留に向けてしまった。


「梨沙、絵留のいつもの癖がでたね」

「うん……。ほんと。自己チュー」


ヒソヒソと話す私たちとは違って、敬太も含めたクラスのみんなは、「そっか」「じゃあ、早い方がいいな」と、納得していた。


絵留はこういうのが上手い。

おっとりとした話し方や優しく見える笑顔も含めて、自分のワガママを上手くごまかす技を持っている。