ナニカ 〜生んで、逃げて、殺される物語〜




梨沙はきっちり結わえたポニーテールを振り乱し、絵留と琴美に向かって泣き喚く。


今も拘置所から出られないバレー部の先輩たちのことを良い先輩だと思っていたなら、そりゃ信じたいよね。


飯塚先輩が殺されただけでもかなりのショックなのに、その犯人までもが身内なんて、梨沙は重ねて衝撃を食らったに違いない。


梨沙にとっては急にナニカを信じるようになったと言うよりは、全てナニカのせいにしちゃえば都合が良かったんじゃないかな。

心が少しは軽くなるといった感じなのかも。


その気持ちは分からなくもないよ。

ただ、ナニカは本当にいるんだけどね……。



梨沙の剣幕に押されて、絵留と琴美は黙り込んだ。


説得するのは無理だと分かったみたいで、『どうする?』と言いたげに顔を見合わせ困っている。


一方、怒りを出し切った梨沙は手の甲で涙をグイッと拭いて、幾分スッキリした顔をして2人に決別宣言をした。