ナニカ 〜生んで、逃げて、殺される物語〜




高校2年の1学期も、あと1ヶ月も経たずに終わる。

進路について真剣に考える時期が来ている。


みんな一旦ナニカのことは頭の隅に寄せて、配られた進路調査表にザワザワしているけど、私は手元の用紙に意識を向けられない。


頭に浮かぶのは、桜井先生の目と口、飯塚先輩の鼻を歪に配置したナニカの不気味な顔。


ナニカの存在を否定するようなことを言ったから、殺された2人。


そして、その2人に対して私は、死のちょっと前に同じことを心で呟いていた。



『ナニカが本当にいるのなら、出てきてムカつくこいつを消しちゃって……』



それが、ナニカに狙われるもう一つの条件なんじゃないだろうか。


被害者がナニカの存在否定を口にすることと、
私がナニカに被害者を消してくれと心で頼むこと。


この2つの条件が揃った時、その人は殺される。


じゃあ、桜井先生と飯塚先輩の死の責任は、やっぱり私にあるということで……。