ナニカ 〜生んで、逃げて、殺される物語〜




私が難しい顔をして「うーん」と考え込んでいると、敬太に話を振られた。



「霞はなに悩んでんだ?
ヒントみたいなものでも掴んでるなら、言ってくれよ」


「え? ヒントとか、そんなんじゃないんだけど、あのね……」



敬太に促されて、今考えていたことを話した。


前に敬太も言っていたことだけど、ナニカの存在否定を口に出したら、ナニカが出てきて殺されるんじゃないかって。


でもそれだけじゃ足りなくて、他にも条件があるはずで。


敬太は私の説明に大きく頷き、「さすが霞!」と褒めてくれた。



「それだよ、それ!
ナニカなんていないって口にすることと、その他にももう一つ条件があるに違いねーよ!

霞ならきっと分かるはずだ。考えてくれよ。

俺、霞のことすげー頼りにしてっから。
ナニカを2回も見たのは霞だけだし、第一目撃者でもあるしな。

悔しいけど、こん中でナニカに一番近いのって、霞じゃないかと思ってんだ」