敬太の横には、真斗も立っていた。

今日もやっぱり男子二人は、ナニカについての話題を口にする。



「最近、毎日ニュースチェックしてっけど、桜井先生の目と口って結局見つかってねーのな。

俺、やっぱり犯人はナニカだと思うんだよなー」



「俺も敬太と同じだよ。
自首したストーカー男は殺した記憶がないし、凶器も持っていなかったんだろ?犯人じゃねーよ。

ナニカが桜井先生を襲ってんのを見てパニクって、記憶がすっぽり抜け落ちたんじゃないかと俺は思う」



「そうだよなー。その方が納得できるよな。
なぁ、女子はどう思う?」



敬太に問われて、私達女子4人は顔を見合わせた。


絵留の頬が微かに膨らんでいる。

今まで絵留の自慢話をしていたのに、話題をナニカにすり替えられたのが面白くないみたい。


でも絵留はすぐに不満げな表情を隠して、敬太と真斗に向けて、可愛らしく怖がって見せた。



「そんなこと聞かれても、私には分かんないよ……。
ナニカについては、もう考えたくないの。だって、怖いんだもん……」



絵留みたいにかわい子ぶって言うことはできないけど、ナニカについて考えたくないというのは私も同じ。


考えてしまうと、ナニカを信じる方向へどんどん気持ちが傾いて行きそうで怖い。


ナニカが存在するとしたら、私が生み出してしまったという罪の意識も感じなくちゃいけなくなってしまう。


だから考えたくないのに、敬太はずっとナニカに夢中で、困ってしまう。