ナニカ 〜生んで、逃げて、殺される物語〜




使用済み天ぷら油を固めて捨てるための凝固剤を、ホームセンターで買い占めてきたというのだ。


「まさか、ナニカをこれで固める気……?」


本気でそんなことを考えているのかと、マジマジと敬太の顔を見つめてしまう。


「固まるといいな」


敬太は楽しそうな声色でそう答えた。

その口ぶりからすると、固まらなくても別に構わないと思っているみたいだ。


理科の実験のように、仮説を立てて、そうなるかどうかを確かめてみたいという気持ちなのかもしれない。


そんな会話をしている内に、ブクブクボコボコという音が階段下から迫ってきた。


「持ってろ」と言われて、懐中電灯は私の手の中に移動する。


階下を照らすと、コの字型の階段の曲がり角に、黒くうねる不気味な姿が浮かび上がった。


思わず後ずさると、「ちゃんと照らせよ」と、敬太に叱られてしまう。


這い上がるナニカが6段下のステップにたどり着いたところで、敬太はバケツ2杯分の凝固剤を一気にぶちまけた。


煙のように白い粉が舞う。


黒いナニカが真っ白になり……上ってこようとする動きが止まった。