敬太は私の上から身を起こし、私も起き上がって小石の上に座った。


「どういうことだ……?」


敬太は混乱しているようで、去って行ったナニカを見送るだけで動けないみたい。


さっき敬太が放り投げた懐中電灯は、うまい具合にナニカと、その少し前を逃げる4人の背中を照らしていた。


「ナニカは俺たちを襲うつもりはないってことか……?」


敬太が独り言のように呟いた時、前方で悲鳴が上がった。


きっとナニカが追いついて、絵留を襲っているのだと思った。


悲鳴が上がったことでワクワクして前方に目を凝らしたけれど、残念ながらその光景は確認できない。


4人が逃げて遠ざかるにつれ、懐中電灯の光が届かなくなってしまったのだ。


ただ、女子3人分の悲鳴が聞こえるだけで、後は真斗が持っていた懐中電灯の光が点となって見えていた。


その光の点は左右に動いた後、地面に落ちたのか、動かなくなる。


「まさか……」


敬太は険しい顔をしてそう呟くと、勢いよく立ち上がり、私を置いて走り出した。


落とした懐中電灯を拾って持って行ってしまったから、私の周囲は急に暗さを増した。