桜井先生から切り取った、目と口。
飯塚先輩から奪った、鼻。
神社で目撃した時と同じくパーツの配置はデタラメで、唇は向きが90度傾き、右目と鼻の位置が逆になっていた。
「キャアアアッ‼︎」
琴美が大きな悲鳴を上げた。
「出やがったな。みんな逃げるぞ!」
そう叫んだのは敬太。
ナニカの出現に全員が驚いているようだが、琴美と絵留は存在を信じていなかった分、より驚きが大きいみたい。
絵留はガタガタと震えて、敬太にしがみついていた。
琴美は両脇を梨沙と真斗に支えられて、走り出す。
絵留は敬太に支えられて、3人の後ろを走り出した。
こっちに向かって逃げてくるみんなと、その数メートル後ろから這うように追いかけてくるナニカ。
それを私は、黙って見ていた。
もう恐怖は感じない。
だって……私は殺されたりしないもの。
ナニカが追っているのは絵留ひとり。
捕まって殺されるのは、絵留だけだから。


