ナニカ 〜生んで、逃げて、殺される物語〜




丸い小石を踏みしめて歩く足音が、闇の中に消えていく。


湿った匂いに、低く囁くような波の音。

みんながいるから平気だけど、ひとりで探しに来たなら、夜の怖さをひしひしと感じていたことだろう。


闇の中で真斗の懐中電灯は、私たちの足もとを照らしていた。


一方、梨沙の懐中電灯は、前方を照らしている。


右に光を向けると、寄せては返す波打際が、ぼんやりと浮かび上がる。

その光をゆっくりと左に振ると、白っぽい小石がゴロゴロしている岸辺が目前に広がり、さらに左に向けると、暗い林が浮かび上がった。


湖、小石、林、小石……湖、小石、林……。

左右にゆっくりと動く懐中電灯の明かりは、さっきから似たような景色ばかりを、繰り返し私たちに見せつける。


湖も小石も林も、もう見たくないよ……そう思った時、右から左に流した懐中電灯の光に、何かが反射してキラリと光った気がした。