ナニカ 〜生んで、逃げて、殺される物語〜




驚くクラスメイトたちを掻き分けて、私はキャンプ場を出て行こうとした。


「霞も敬太を? あちゃー、マジか」

「霞が探しに行ったらマジ修羅場じゃん」


後ろからそんな声が聞こえるけれど、今は気にしていられなかった。


集団から数メートル離れた時、誰かが走って追いついてきた。

それは、琴美。


「絵留のために、止めにきたの?」


敵意を持ってそう聞くと、琴美は首をブンブンと横に振った。


「違うよ。私も探す」


「え? なんで?
琴美は絵留の味方でしょ?」


「私、もう絵留は嫌。
クジ引きの時も、本当はすっごく嫌だった。卑怯なことって嫌いだから。

霞、勝手なこと言ってごめんね。でも私、やっぱり霞と梨沙と一緒がいい」


「琴美……ありがと」


今さら何言ってるの?と言う気はない。

絵留は大嫌いだけど琴美だけは取り戻したかったし、今はひとりでも多くの味方が欲しいから。