ナニカ 〜生んで、逃げて、殺される物語〜




「てことは、絵留が敬太を狙ってるってことか?」


男子のひとりがそう言ったことで、それまで心配していたみんなが、この状況を楽しみ始めた。


「絵留って、意外に肉食系だったんだね」

「敬太と絵留ちゃんか〜お似合いかも!」

「今頃ふたりはイチャついてるのかな?」

「これは探しに行ったらダメなパターンだろ。
真っ最中だと、マジやべーし」


そんな……。

みんなの反応に、私は背中に冷や汗が流れていた。


インチキなクジ引きがバレたのに、どうして誰も絵留を非難しないの?


それどころか、絵留と敬太の仲を応援するような雰囲気が出来上がり、私の焦りは加速する。


さらには、探しに行こうという人までがひとりもいなくなってしまって、泣き出したい気持ちになってしまった。


この中で私の恋心を知っているのは、梨沙と琴美と真斗だけ。

みんなにバレるのは恥ずかしいから嫌だけど、敬太と絵留を応援するような雰囲気に我慢ができなくなり、つい叫ぶように言ってしまった。


「そんなこと言うのやめてよ!
みんなが行かなくても、私は敬太と絵留を探しに行くから!」