ナニカ 〜生んで、逃げて、殺される物語〜




クラス委員の渡辺くんが人数を数えている。


「24、25、26……あれ? ふたり足りないな。
敬太と絵留がいないのか。あいつら、何番スタートだったっけ?」


誰かが「3番目」だと答える。


「3番目? 何で戻ってこないんだ?
おい、敬太たちとすれ違ったヤツ、いる?」


それまでは写してきた写真を見せ合ったり、肝試しの感想を話したり、賑やかで楽しそうだったクラスメイト達が急に心配し始めた。


「見た?」

「ひとつ目のチェックポイントで見かけたけど、それ以降は見てない」

「他に見た奴は?」

「うそ、その後誰も見てないって、ヤバくない?」


何が起きたのか分からないけど、敬太と絵留の身に危険なことが起きたんじゃないかと、みんな慌てている。


一方、みんなより少しだけ事情を知っている私は、どうしようかと困っていた。


私の隣は梨沙と真斗がいる。

梨沙にはさっき、絵留が敬太にウソの相談をしていると説明したばかり。

梨沙は「許さない!」と怒ってくれた。


ふたりが戻ってこないということは、きっと絵留がまだ相談中なのだろう。


ウソ泣きしながらウソのイジメの相談をしている絵留と、それを親身になって心配している敬太の姿を想像してしまった。