敬太の言葉に、「うん」と返事もできずにうつむいた。


どうしよう……。

私のついた小さな嘘が、大事になっちゃった。


私は敬太に構って欲しかっただけで、決して騒ぎを起こしたかった訳じゃない。

敬太が先生に怒られるのも、望んでない。


心が痛いな……。

言っちゃおうか? あれは、私の嘘だって。

ううん、やっぱりダメ。

敬太はこんなにも信じているのに、白状したら私は嫌われてしまう。


それに、まるでナニカが這った跡のような、あのヌメヌメして黒い筋。

あんな物を付けたのは私じゃないのに、嘘話だったと知られたら、トイレを汚したのも私の仕業だと言われてしまいそう。


うーん、どうしよう。
ナニカなんて、いないのに……。



昨日は、もしかしたら私の言葉から得体の知れない化け物が生まれてしまったんじゃないかと思って怯えたけど、

一晩経って、やっぱり『そんなことは有り得ない』という結論に達していた。


私は幽霊も妖怪も信じない。

信じないからホラー映画も怖くない。

血が飛び散ったりするグロイ奴は、気持ち悪いから嫌だけど……。