ナニカ 〜生んで、逃げて、殺される物語〜




ああ、よかった……。

ホッとして力が抜けて、しゃがみ込んでしまう。


すると真斗が「そこに石塔作る?」と、私がしゃがんだ意味を勘違いして石を積み始めた。


どうやら真斗には、あの音が聞こえなかったみたい。

私にはハッキリと聞こえたんだけど、どうしてかな?

私の心がナニカとリンクしているから、音も他の人よりハッキリ聞こえるとか……そんな理由は怖いから嫌だな……。


真斗と一緒に石を積み上げる。

私を気遣って真斗は、敬太と絵留に関係ない話題を振ってくれる。


でも、相づちを打ちながらも、私の心はやっぱり絵留から離れられず、苦しくて仕方ない。


絵留には腹が立つけれど、まともに怒ることもできないなんて辛いよ。


これから私はどうやって、絵留と対峙していけばいいんだろう……。




それから、小さな石塔を作って写真に収め、来た道を引き返した。


途中で、私より後にスタートした何組かのペアとすれ違い、話をした。


みんなテンション高めで、肝試しを楽しんでいるのが伝わってくる。


でも私は、「敬太と絵留、見なかった?」と聞いて、「見てないよ」と言われるたびに不安が大きくなるだけ。