ナニカ 〜生んで、逃げて、殺される物語〜




「敬太はどこにいるの? 絵留は?
まさか、肝試しコースから外れているんじゃないよね?」


矢継ぎ早に質問する私に、真斗は困ったような顔をして答える。


「大丈夫だよ。心配ない。
霞は気にしなくていいから」


何よ、その曖昧な返事は……。

何かを隠しているような真斗にイライラして、つい怒ってしまった。


「どうして教えてくれないの?
教えてくれないと嫌な方に考えちゃうじゃない。ヒドイよ!」


真斗はため息をついてから、「そうだよな」と納得してくれた。


それから言い難そうに、敬太との電話の内容を教えてくれた。


「絵留が泣き出して、相談に乗ってほしいと言ってきたんだって。

それで、レストハウスの裏側で話を聞いているって」


「相談?」


「うん。霞に……イジメられて辛いと、絵留が敬太に言ってるらしい」


「はあっ⁉︎」



絵留のヤツ、なんて卑怯なことを……。

私が敬太に嫌われるようにと、そんな嘘を言っているのだろう。


ひどいよ、ひどすぎる。

正義感の強い敬太が、その嘘を信じちゃったら、私はどうすればいいのよ!