ナニカ 〜生んで、逃げて、殺される物語〜




「この肝試しって、お化けが出そうで怖いというより、転びそうなのが怖いよな。

霞、俺の腕に掴まってろよ。お前が嫌じゃなければだけど」


「う、うん」


ありがたく真斗の左腕を支えにさせてもらう。


そうすると転ぶ心配は減るけれど、絵留と敬太についての心配が膨らんでしまう。


絵留は今ごろ、敬太の腕に掴まって歩いているのかな……。


敬太は嫌がらないと思う。

優しい人だから、真斗みたいに自分から、「掴まってろよ」と言いそうな気もする。


ふたりは何を話しながら、歩いているのだろう……。

甘いムードになっていたら、どうしよう……。


考えないようにしたいのに、次から次と湧き上がってきてしまう不安と、絵留への怒り。


ズルして敬太とペアになるなんて、最低……

そう考えてしまっては、怒ったらダメだと自分に言い聞かせることを、繰り返していた。


暗い中を、小石を踏みしめて歩く。

スマホライトを左に向けると、奥の方はずっと林が続いていた。


右側は、湖が見える。

月の光が湖面に反射しているので、ライトがなくてもうっすらと波打つ様子が確認できる。


打ち寄せる波の音が、静かな中に絶え間なく繰り返されていた。