ナニカ 〜生んで、逃げて、殺される物語〜




その先の言葉が形をなす前に、耳にある音が聞こえてきた。


ブクブクッ……ボコボコボコ……。


遠くから微かに聞こえてきたその音に、ハッとして我に返って振り向いた。


突然私が後ろを見たので、梨沙が驚いている。


「霞、どうしたの?」


「音が……」


「音? なんの?」


「あ、ううん……。
なんでもない。気のせいみたい」



心臓が爆発しそうな勢いで、激しく動いていた。


梨沙には聞こえなかったようだけど、一瞬だけ、ブクブクボコボコという音を、私はたしかに聞いた。


ドロリとした液体が沸騰しているような音は、ナニカが動くときに発する音。


方向は湖の方からで、ずいぶんと小さな音だったから、距離はかなり離れている気がするし、今はもう聞こえない。


神社で見たナニカの姿を思い出してしまい、恐怖に肌が粟立った。


でも、それ以上に怖いと思うものができてしまった。


それは……私自身。