ナニカ 〜生んで、逃げて、殺される物語〜




慌てて梨沙の腕を掴んで、引き止めた。


「ダメだよ!」

「なんで?」

「だって、証拠がないもん」


なんの証拠もなしにそんなこと言ったら、言いがかりだって言われて、私達が悪者にされてしまいそう。


それに、「敬太とペアになれなかったからって、文句言わないでよ」とみんなの前で言われてしまったら……恥ずかしくて、私はもうキャンプを続けることができなくなってしまう。


それを梨沙に説明すると、残念そうな顔をして、「そっか」と納得してくれた。


敬太が好きだからこそ、絵留に文句を言うことさえできない。


意地悪で、卑怯者で、ワガママな絵留に防戦一方で、なにも仕返しできない。


悔しいよ……。

すごく悔しくて、心の中が黒くよどんで気持ち悪い。


なに、この気持ち?

ドロドロとした黒い想いが心の中でうごめいて、それが言葉となり、頭の中に響いてくる。



『絵留なんて、キエテ、ナクナレバ……』