ナニカ 〜生んで、逃げて、殺される物語〜




敬太の言葉に、静まり返っていたみんながどっと笑った。


「お前、まだそんなこと言ってんのかよ〜」

「捕まえるのは無理だって、前に言ったじゃん」


みんなから口々に否定されて、敬太は不満げだ。

「やってみなきゃ分かんない」とか、「石をぶつけてやる」とか反論しているけれど、ますますみんなの笑いを誘うだけだった。


敬太のお陰と言うべきか……ナニカが出てくるかもしれないという恐怖は、笑いに上書きされて消えてしまった。


最初は怖がっていた女子さえも、肝試しをやってみようかという気持ちに変わっていた。


さっき、ナニカが出てきたら……と心配していた女子が、笑いながら言った。


「お化けに出会うなんて、そんなにあることじゃないよね」


クラス委員の渡辺くんも言った。


「そうそう。心霊写真を撮るだけでも難しいのに、実際に出会う確率はかなり低いと思うよ」


他の男子も言う。


「俺らは、ナニカに襲われることはないだろ。
この前、敬太が言ってたよな? ナニカに襲われる条件ってヤツを」