「霞が言ってた黒くてドロリとしたナニカって奴は、便器から出て来て、壁を登ったってことか……。

そんで、隣の個室に入ってた霞が、壁の向こうから入ってこようとしているナニカを見たんだよな?」


「う、うん……」


「ゴメン、さっきまで半信半疑だったんだけど、マジなんだな。
スゲェ……。楽しくなってきた」



敬太は少しの怯えと興奮が入り混じったような顔をして、私を見る。


一方私は……『どうして?』という思いでいっぱいだった。


黒くてドロリとしたナニカなんて、私の作り話なのに、これは一体どういうこと?

まるで本当にナニカがいたみたいじゃない。


私がここのドアを閉めた時、中は間違いなく普通のトイレで、こんな風になっていなかった。


私が悲鳴を上げてトイレから出て行った後に、誰かが閉まっているドアを開けて、こんな風に汚して、またドアを閉めたということなの?


誰が、どうして、何のために?


もう、何がなんだかわからないよ……。