ナニカ 〜生んで、逃げて、殺される物語〜




数秒の沈黙の後、真斗が謝った。


「ゴメン、敬太……」


真斗は敬太の中学からの親友。

敬太がされて嫌なことも、怒るポイントも知っていると思う。


それでもつい、みんなに合わせてからかってしまった真斗の横顔には、「しまった」と言いたげな色がにじんでいた。


「悪かったよ。もう言わないから、楽しくいこうよ。ほら、みんなも謝って」


そう言ったのは、クラス委員の渡辺くん。


「敬太くん、ゴメンなさい」

「霞ちゃんも、ごめんね」


クラスの女子たちも、口々に敬太と私に謝ってきた。


敬太はみんなの方に振り向いて、苦笑いしながら答える。


「怒ってないよ。ただ、こういうの苦手なんだ。
俺の方こそ、空気悪くしてゴメン」


敬太が許してくれて、ああ良かったと、みんなの顔がホッとしていた。


私も同じ。

敬太と少しずつ距離を縮めてきて、最近では仲良いよねと自分でも思えるくらいにまでなったのに、こんなことで今の関係が壊れてしまったら悲しすぎる。


敬太が大好きだから、慎重に、ゆっくりと恋を実らせたいの……。