密室の恋人

「え?」

 店員はにっこりと微笑み、
「先程、オーナーの方から」
と言う。

「ご結婚おめでとうございます」

 今の話を聞いていたらしいオーナーが奥から現れる。

 ちょうど店舗を巡回中のようだった。

「あ、ありがとうございます。
 あの、お支払いいただくわけには……」

 いえいえ、とオーナーは鷹揚に微笑み、
「伊月さまにはいつもお世話になっておりますから。
 蒼汰さまにも、お義母さまにもよろしくお伝えください」
とサービス券まで二人にくれた。

「ありがとうございました」
と頭を下げて、店を出る。

 やばい。
 奢ってもらってしまった。

 蒼汰さんとお義母さまに報告しなくちゃ、と思いながら、階段を下りている横で、麻友が、
「これ、千円引きのチケットじゃん。
 こんなにっ。

 凛子ありがとうっ。

 ってか、あんた、一体、誰と結婚するの?」
と言ってくる。

 いや……。

 うーん。
 なんと言ったらいいのか。

 少し迷って、
「猫と電車が好きでちょっと不眠症の人」
と答えた。