密室の恋人

「でも、エレベーターだけを警戒していても駄目なのかも。

 あの人、エレベーターじゃなくて、やっぱり、蒼汰さんに憑いてるみたいなんですよ。

 自分は蒼汰さんに憑いてる悪霊だって言ってました」

 悪霊ねえ、と呟いた弥は、
「なんで、蒼汰くんに悪霊が憑くの?」
と訊いてくる。

 うっ。
 そうだ。

 確かに、そこを話さなければ、話が進まない。

 だが、あのエレベーターの霊が蒼汰に殺されたと言っていたなどと、迂闊にもらせるような話ではない。

 そう思いながら、ちらと上目遣いに窺うと、
「まあ、蒼汰くんって、道端に祀ってある、ありがたい石とかをうっかり蹴ったりしそうだよね」
と言ってくる。

 まあ、そういうところもありますよね……。

 それで納得してくれるのなら、石を蹴った汚名を着てもらおうか、と少しほっとしていると、

「なーんてね。
 凛子さん」
と弥が横目にこちらを見る。

 うわっ。
 久しぶりに出た『凛子さん』。

 昔はそれで慣れていたが、今、そうやって呼ばれると、要警戒って感じだ。