エレベーターは彼らが乗ってきたときのまま、まだ止まっていた。
そして、何故か開いていた。
待ち構えていたかのように。
誰かが延長ボタンを押していたのかな、と思う。
なにか、普段閉まっているはずのものが開いていると、ちょっと怖い。
その空間にひっそりと待ち構えているなにかに呑み込まれそうで。
そんなことを考えていると、弥が、
「どうしたの?」
と訊いてくる。
いえ、と言いながら、一緒に乗り込み、
「普段閉まってるはずのものが開いていたり、開いてるはずのものが閉まってたりすると怖くないですか?」
と訊くと、弥は、ああ、と階数ボタンを押しながら言う。
「怖いね。
開けてたはずの洗濯機の蓋が閉まってたり、トイレの蓋が閉まってたりすると」
「いや、開けてたはずだったら、それはもちろん、怖いですよ」
「会社のトイレもちょっと怖いかな。
この蓋開けたら、水流してないままなんじゃないかと思ったり」
「それはまたなんか違うような……」
「たまにあるんだよね」
と弥が腕を組んで首を傾げたので、水を流してないことが? と思ったが、そうではないようだった。
「勝手になにかが開いたり閉まったり。
蛍光灯がついたり消えたり」



