「あのさ」
気を取り直して立ち上がる。
どうせならちゃんと目を見て言おうと思って、石原さんの目をまっすぐ見る。さっきより距離が近い気がするのは気のせいじゃない。
「昨日、看病してくれてありがとう」
言った瞬間、自分でも少しだけ変な感じがした。
普段こんなこと言わないからかもしれないし、相手が石原さんだからかもしれない。でも言わないままの方が、もっと気持ち悪いと思ったから。
その瞬間、石原さんはなぜか鼻に当てていた手を、いつのまにか耳に当てていて。
「……ちょっと、なにしてんの」
どう見ても今の聞いてなかっただろ、この人。俺の中で一瞬だけ「言わなきゃよかった」という感情がよぎる。
「い、いいい今井くんが私にありがとうって……」
「聞こえてたんだ」
それにしてもリアクション大げさすぎるだろ。俺だってお礼くらいする。
「あ、の……今井くん」
「なに」
「そろそろ……ね」
なんだよその歯切れの悪さ。
言いたいことあるならさっさと言えよ、と思っていると、石原さんは顔をゆでダコみたいに真っ赤にして、小さな声で言った。
「手を離してくれませんか……?」
「え?」



