「今井くん、私怒ってるんだからね!!!」
「知らん」
知らんじゃありません!!ずっと無視しやがってこの野郎!!!
心の中で叫びながら、でも結局は隣を歩き続けてしまう自分が悔しい。
廊下を抜けて、階段を降りて、気づけば二人で並んで歩いているこの距離が、なんだかやけに近く感じて、さっきまでの怒りとは別の意味で落ち着かなくなる。
沈黙が少しだけ続いて、そのたびに横にいる今井くんの存在を強く意識してしまう。
やがて下駄箱に着いて、「……え?」と思わず声が漏れた。
本当にどこ行くんだろう。外に出るの?それともどこか寄るの?全然読めない。
「何してんの。帰るよ」
「えっえっ!!」
帰るって、え、ちょっと待って、それってつまり――一緒に帰るってこと!?
頭が一瞬追いつかなくて、状況を理解するのに数秒かかる。
さっきまで普通に“呼び出し”だと思ってたのに、これはただの帰り道?
いやでも、それでも、今井くんが“私を呼んで”“一緒に帰る”っていう事実が、じわじわと実感になって胸に広がっていく。
さっきまでの怒りとかモヤモヤとか、全部どこかに吹き飛びそうになるのを必死で抑えながら、それでも口元が緩みそうになるのを我慢できなくて、少しだけうつむいた。
……なにこれ、ずるい。こんなの、怒り続けるの無理じゃん。



