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「帰ろー」
「まってよー」
放課後、チャイムが鳴ってから少し時間が経った教室は、さっきまでの騒がしさが嘘みたいに静かになっていて、机や椅子の並びがやけに広く感じる。
窓の外は夕方に差しかかっていて、オレンジ色の光が教室の中に長く伸びていた。
そんな中で、私は鞄を持ちながらぐっと拳を握る。
………………よし!と小さく気合いを入れてから、「中村行こう!」と勢いよく声を出した。
私たちも、佐倉くんのいる教室に向かった。
「佐倉くん行こう!」
「おーう」
軽く返事をする佐倉くんと、その横でどこか落ち着かない様子の中村。
ふと中村を見ると、さっきまでのいつもの強気な顔じゃなくて、どこか柔らかくて、明らかに“女の子の顔”をしていて思わず目を細めた。
そんなに、佐倉くんが好きなのね中村。
なんだか微笑ましくて、同時に少し羨ましくもなる。
大丈夫!親友の私が協力してあげるから!そんなことを勝手に決意しながら、私は中村の肩にポンと手を置いた。
「その顔うざいし、手もウザイ」
即座にバシッと手を払われてしまって、少しだけショックを受けつつも、いつものやり取りにちょっと安心する自分がいる。



