【大幅加筆】クール男子の取扱説明書




*



「帰ろー」


「まってよー」



放課後、チャイムが鳴ってから少し時間が経った教室は、さっきまでの騒がしさが嘘みたいに静かになっていて、机や椅子の並びがやけに広く感じる。

窓の外は夕方に差しかかっていて、オレンジ色の光が教室の中に長く伸びていた。


そんな中で、私は鞄を持ちながらぐっと拳を握る。


………………よし!と小さく気合いを入れてから、「中村行こう!」と勢いよく声を出した。

私たちも、佐倉くんのいる教室に向かった。



「佐倉くん行こう!」


「おーう」



軽く返事をする佐倉くんと、その横でどこか落ち着かない様子の中村。

ふと中村を見ると、さっきまでのいつもの強気な顔じゃなくて、どこか柔らかくて、明らかに“女の子の顔”をしていて思わず目を細めた。


そんなに、佐倉くんが好きなのね中村。


なんだか微笑ましくて、同時に少し羨ましくもなる。


大丈夫!親友の私が協力してあげるから!そんなことを勝手に決意しながら、私は中村の肩にポンと手を置いた。



「その顔うざいし、手もウザイ」



即座にバシッと手を払われてしまって、少しだけショックを受けつつも、いつものやり取りにちょっと安心する自分がいる。