「由良おはよー」
「中村おはよー!」
教室に向かう途中、いつものように廊下で中村に遭遇。
「なに、ニヤニヤしてんのよ。気持ち悪い」
「なっ……!ニヤニヤしてません!」
思わず声が裏返ってしまって、自分でも動揺しているのが分かる。
そんなつもりはなかったのに、言われた瞬間に自分の口元がゆるんでいる気がして、慌てて表情を引き締めた。
中村が言うには、私はここ最近ずっとこんな感じらしい。気づいたらニヤけていて、そのたびに容赦なく「キモイ」と言われる。
……そんなに分かりやすいのかな、と思いつつも、原因に心当たりがありすぎて否定しきれない自分がいるのが悔しい。
「どうせ、今井くんのことでしょ」
呆れたような視線を向けられて、一瞬言葉に詰まる。でも次の瞬間には、もう開き直っていた。
「逆にそれ以外あると思ってんの?」
そう言い返すと、中村は大きくため息をついたあと、わざとらしく私を睨んできた。
「もう、教室なんだからニヤけるのやめてよね」
「ほーい」
軽く返事をしながらも、胸の奥はそわそわして落ち着かない。
だってもうすぐ会えるかもしれないんだから。



