「これ、おいしそう〜!」
……いない。いつの間にか少し離れたところで、ケーキコーナーを見ている石原さんの姿があった。
「石原さん?」
近づきながら声をかける。でも、石原さんは振り向かない。
「今井くんは、あの人たちと話してていいよ?私、お金払ってくるね」
そう言って、俺の持っていたジュースを取ろうとする。その声が、どこかいつもと違って聞こえた。
「何言ってんの?」
ジュースを渡す前に、その手を軽く掴む。
「じゃあ、俺はこれで」
「あ、はい」
最低限のことだけ言って、その場を離れる。これ以上話す理由なんてない。俺は左手にジュースを持って、右手で石原さんの手を引いた。
「待って!!」
後ろから声が飛んでくる。
「なんですか?」
「名前教えてください!」
「……はあ?」
なんでそんなこと聞くんだよ。正直面倒くさい。
「なんで俺が」
「えっと…」



