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「あ、来たきた!おせーよ、今井と佐倉」
ロビーに入った瞬間、すでに集まっていたみんなの視線が一斉にこっちに向いた。
「ごめんねーちょっと女の子とさぁ」
軽い調子で余計なことを言い出す渉に、反射的にツッコミを入れる。
「一々言わなくていいから」
さっきの出来事をわざわざここで話す必要なんてないだろ、と内心でため息をつく。
「女の子?」
案の定、その一言に反応したのは中村さんだった。さっきまでの柔らかい表情が一瞬で少しだけ険しくなる。ああ、だから言うなって言ったのに。
「いや、何も無いよ?舞琴ちゃん」
「ふーん?」
疑ってるのかどうか分からない、微妙な返事。その空気に居心地の悪さを感じながら、俺は渉の耳元に顔を寄せる。
「渉、お前馬鹿だろ」
小声でそう言うと、渉は「え~」なんてわざとらしく嘘泣きをしてみせる。本当に面倒くさいやつだ。これから中村さんは苦労するだろうな、とどうでもいいことを考える。
「まぁ、とりあえず……女子たち、俺らの部屋くる?」
涼太くんの一言で空気が一気に明るくなる。
「それいいかも!」
みんなが乗り気になって、そのまま流れるように部屋へ向かうことになった。


