「お前、なんでそんな急いでんだよ」
「早く会いたい」
短くそう答えると、渉は一瞬だけ黙ってから「あーそういうこと。俺もだけど」と笑った。
珍しく意見が一致して、二人で少し早歩きになる。ロビーにいる“会いたい相手”の顔が頭に浮かぶたびに、自然と足が速くなる。
「今の2人、かっこよかったね!!」
「うん……」
「まさか、薫惚れちゃった!?」
「あの、焦げ茶?の髪の色をした、クールな人……高校生かな……」
「明日も会えるといいね」
そんな会話が後ろで交わされているなんて、もちろん知るはずもない。
ただ俺は、これからまた石原さんに会えるということだけで、少しだけ胸が高鳴っている。
そして、この後に起こることなんて何も知らないまま、その気持ちだけを頼りにロビーへと向かっていた。



