「野村頑張れよー」
渉が背中に向かって声を投げる。俺は何も言わないけど、心の中では同じようにエールを送っていた。
「で?祐月はどうなの」
気づけば、涼太くんの顔がすぐ目の前にある。近いって。
「どうもなにも……何が?」
「由良ちゃんのことだよ」
分かってる。分かってるけど、こうやって真正面から聞かれると、急に言葉が出なくなる。
「それは……本人に一番最初に言いたいから」
「流石、イケメン祐月」
「できれば……この旅行で伝えたいかなって」
「祐月、それもう俺らに言ってるようなもんでしょ」
その通りだ。でも、やっぱり違う。ちゃんと本人に、自分の口で伝えるまでは、どこか中途半端な気がする。
特別な言葉だからこそ、一番最初に届けたい。
そんな柄でもないことを考えてしまう自分に、少しだけ苦笑する。
また、頭の中は石原さんでいっぱいだ。
湯船の温かさとは別の熱が、胸の奥に広がっている気がする。そして俺たち三人も湯船から上がり、それぞれシャワーへ向かう。水音の中で、さっきまでの会話が何度も頭の中で反芻されていた。



