理由なんて分からない。ただ、面白くない。
気づけば、近くにいた女子を無意識に睨みつけていて、相手が一瞬ビクッと肩を揺らした。
「……俺、なにしてんだ」
小さく呟く。こんなの、完全に八つ当たりだろ。なんで石原さんは、俺を放っておいて委員長のところに行くんだよ。
俺は――その場から離れた。
逃げるみたいに、一人で水族館の中を歩き出す。人の流れに逆らうこともなく、ただ目的もなくフラフラと。賑やかな声や水の音が混ざり合う中で、自分だけが少し浮いているような感覚だった。
しばらく歩いていると、小さな水槽が目に入った。派手な展示でもなければ、人だかりができているわけでもない。でも、なぜかそこに目が止まった。
水槽の中には、鮮やかな黄色と赤色の小さな魚がゆらゆらと泳いでいる。その色合いが妙に目を引いて、しばらく見入ってしまった。
「キンギョハナダイ……?」
表示されている名前を読み上げる。金魚なのか、鯛なのか、どっちなんだよ。
「キンギョハナダイ。綺麗ですよね」
突然、隣から声がして肩が少しだけ跳ねた。ゆっくりと視線を向けると、そこには水族館の飼育員らしき女性が立っていた。


