【大幅加筆】クール男子の取扱説明書





俺といることに、少しも苦痛を感じていないのが伝わってきて、逆に戸惑う。



……ああ、そうか。これも、好きだから、か。



自分で答えに辿り着いておきながら、その事実に妙に納得してしまう。


次の瞬間、背中にドンッと衝撃が走った。



「うわっ――」



振り返る間もなく、石原さんがそのまま俺の腕に絡みついてきた。息を弾ませながら、満面の笑みで見上げてくる。



「暑いんだけど」



思わずぶっきらぼうにそう言うと、「出来たてホヤホヤカップルだからね」と、悪びれもなく返してくる。



「誰がカップルだ」



即座に否定するけど、腕を振りほどくことはしない。というより、できなかった。絡みついてくる腕の温もりと、すぐ隣で楽しそうに笑う表情に、妙な安心感を覚えてしまっている自分がいるからだ。


俺の腕にしがみつきながら、まるでそれが当然みたいに歩く石原さん。その姿が、どうしてか無性に愛しく見えてしまって。


気づけば、もう片方の手をそっと持ち上げて、髪に触れようとしていた。


……けど、途中で止める。

指先が空を切る感覚だけが残る。危ない、危ない。こういうことは、ちゃんと自分の気持ちに名前をつけてからじゃないと。

中途半端な優しさは、相手に余計な期待を持たせるだけだ。そんなこと、分かってるはずなのに。