「とりあえず、どっか行く?」
そう言いながらも、正直なところ行き先なんてどこでもよかった。ただ、この時間を石原さんと二人で過ごせるなら、それだけで十分だと思っている自分がいる。
「うん!やったー、今井くんとデート!」
弾けるような声でそう言って、両手を軽く上げて喜ぶ石原さん。その無邪気さに一瞬だけ視線を奪われるけど、すぐに平静を装って前を向く。
「一応班別行動だけどね」
あくまでこれは“班別行動”だと、自分にも言い聞かせるみたいに付け加える。
隣ではしゃいでいる石原さんとは対照的に、俺はなるべくいつも通りを装って、少し早めのペースでスタスタと歩き出した。
後ろから「待ってよー!」なんて間延びした声が聞こえてくるけど、わざと気づかないふりをする。
自分から連れ出しておいてこの態度はどうなんだ?
それでも、距離を保たないと、簡単に飲み込まれそうで怖かった。それくらい、今の石原さんは眩しい。
それでも、石原さんはやっぱり石原さんで。そんな俺の態度なんて気にもしていないみたいに、後ろから軽い足音を響かせて追いかけてくる。


