「俺、ちょっと行ってくる」
「え?あぁ、おう」
自分の部屋に戻る前に行くべき場所がある。
場所は決まっている――俺の親友、渉のもとだ。
少しホテルの廊下を歩くと、角のベンチにひとりで座っている渉がいた。肩を落とし、頭を少し下げている。
「あー……祐月」
「なんでそんな暗いの」
一瞬、てっきり中村さんといい方向に進んで上機嫌なのかと思っていたけれど……全然違った。
「助けて……」
すっごい落ち込んでるし。石原さんにもだけど、こいつにも手がかかる。 しょうがないな……。
「話聞いてやるから、部屋戻るぞ」
ちなみに、俺と野村と渉は同じ部屋。
こんな廊下で恋の話をするのもどうかと思うし、先生に見つかるのもまずい。
俺たちは、静かに部屋に戻る。廊下の蛍光灯の光が床に反射して、ふたりの影を長く伸ばす。石原さんのこと、中村さんのこと、渉のこと――考えれば考えるほど、胸の中でいろんな感情が交差していく。



