妬こうよ、そこはさ。

あんまり不器用すぎて、不器用な奥さんがあんまり可愛すぎて、思わず伸ばしかけた手をどうにか誤魔化すべく、提げていた袋を差し出す。


「本当ごめん、あのさ」

「うん」

「疲れてるかと思って入浴剤買ってきた。お土産」


はい、と押しつけた袋の中身を確認して、彼女が眉をしかめる。


「……何でヒノキなの。臭い」

「臭くない、いい香りだ」


至って真面目に訂正して、でもそうだな、と思いつくままに言ってみた。


「嫌なら今度一緒に、別のもの買いに行こうか」


彼女が黙り込む。


結んだ唇はきっと、跡がつくほど強く内側を噛んでいるに違いなくて、大人しく待つ。


感情を悟らせない彼女が分かりやすく唇を引き結ぶときは、何か大きな葛藤や感情や決断が、冷静な無表情の下にあるときだ。


「そもそもいらない」

「何だって」


論点をすり替えられたことには気付いたけど、そのまま料理の準備を始めた俺の背中に、そっと声がかかる。


「疲れてないから大丈夫。ありがとう」

「そうか」


それならいい。


いつでも笑ってくれたらなんて思わないけど、穏やかにいてくれたらとは思う。


「あの。私……」

「うん」

「…………ふあん、で」

「ん?」


ちゃんと聞こえなくて聞き返すと、尻込みしてしまったらしい。


諦めた顔で口を閉じて、首を緩く振る。


「…………何でもない」

「いや、気になる。何?」


何か大事なことを言ったのは、表情から分かった。