妬こうよ、そこはさ。

「ただいま」

「おかえりなさい」


扉を開けると、普段は中で待っている彼女が出迎えてくれて、戸惑う。


その少し硬い表情に、ああこれは何か言いたいことがあるんだな、と当たりをつけた。


「どうした?」


うん、と頷いて、答える代わりに発問する彼女。


「何しに行ってたの?」


詮索をしないように努めている奥さんのあまり見ない姿に、珍しいなと頭の隅で考えながら、若干省略しつつ、嘘でない範囲を答えた。


「友達に呼び出されて」


まさか、嫉妬したので落ち着こうとして、とか、一旦頭を冷やそうと思って、とか言えるはずもない。


「緊急だって言うから行ったのに、全然緊急じゃなかったから帰ってきた」


解けない彼女の俯き顔に、焦って口が滑った。


ごめん本当ごめん、ダシにしてごめん。でもこれで賭けの対象にされたぶんはチャラにするから……!


友人、特に奥さんの栞さんに心中平謝りしながら様子を伺う。


軽く頭を下げた俺に、どこかかげりのある無表情で、もう一つ。


「その人男性?」

「え? 男だけど」


即答して、ああ、と、俺はようやく思い至った。


彼女のことだからと可能性を丸きり考えていなかったけど、これはもしかして。もしかしなくても、多分。


ヤキモチを妬かれている。


思えば彼女の不可思議な行動も、ヤキモチを妬いたり妬かせようとしたりしていたのだという前提で振り返ってみれば、


……納得できる、気が、しなくもない。