妬こうよ、そこはさ。

そんなにおかしいだろうか。……おかしいか。


今日は主に奥さんのせいで動揺してばかりいる。


「奥さん大事にしろよ」

「分かってる」


ひらりと手を上げて別れた後、頷きに違和感を覚えたのは。


大事にするということ、ひいては彼女を好きでいることが自分にとってあまりに当たり前すぎて、なかなか言葉にしないからかもしれなかった。


もう長い間、あまりに自然な感情で、あまりに当然で、彼女を嫌いになる訳がないと確信していて。


ああそうか、そうだ俺は彼女が好きだった、なんて考えてしまうくらいには、彼女を好きでいることが前提にありすぎて。


『好きです』

『ありがとうございます』


あの日、単刀直入に切り出した俺に、彼女はほんの少し目を見開いて言った。


そして。


光栄です、ごめんなさい、と冷たく返されなかったのだからこれはいけるか、と考えた俺に、さらりと提案した。


『では、お付き合いしましょうか?』

『あ、はい。よろしくお願いします』

『よろしくお願いします』


付き合い始めはそんなで。


普段会うときも、好きだなんてお互いに言わなくて。


『なあ、そろそろ籍入れないか』

『そうだね。これからもよろしく』


プロポーズだって、そんなで。


俺たちは昔から、甘さがあまりなかったように思う。


愛を囁かないし、名前で呼ばないし、記念日だって誕生日と結婚記念日を祝うくらいだ。