妬こうよ、そこはさ。

「私は平気」

「…………」


俺の奥さんはついに頭がおかしくなったらしい。


寒さにやられたのだろうか。


唐突に口を開いた彼女を怪訝に見遣り、本から顔を上げる。


「……何が」

「だから、平気」

「…………うん、何が?」


平気、と繰り返すばかりで具体的に言葉にしない彼女に焦れる。


「いや、だから」

「何もかもが平気」

「……それはよかった?」


もういいや、と若干投げやりな返事を投げたのに、彼女は何か納得顔で首肯。訳が分からない。


私は平気、と急に言い出すなんて奇行、真剣に心配すべきところなのかもしれないけど、俺はいささか疲れ始めていた。


今日はずっと彼女に振り回されている。


続きを目で促したのに、ものすごく真剣な表情で「平気」とだけ返されたら、どうしたらいい。


平気って、何がだよ。


続きを話さなくて平気ってことか?

それともこれはもしかして疑問で、俺が疲れているように見えでもしたから、心配してくれてるとかか?


……駄目だ、全然分からない。


しまいには、後でな、と言ってしまった。


どっと疲れた気分で目を伏せる。


しばらくたって、彼女がぽつりと呟いた。


「……ごめん、なさい」

「…………」


何て返せばいい。


いいよとでも言えばいいのか。気にするな、か。それとも流して話題転換した方がいいのか。


結局返事に詰まって無言になる。