妬こうよ、そこはさ。

なんだよ。よかった。


安心して密かに溜め息を吐く。


ほう、と吐いた息をぬうように、いまだつけっぱなしのテレビから件の俳優の声が聞こえてきて、思わず口を歪めた。


「なあ、これ見てる?」


ちらりちらり、嫌なのを隠しもせずに見遣って、渋々確認。


何か見たい理由でもあるのだろうから、消してくれとは言えないけど、できれば消して欲しい。


伺った彼女は何故か、テレビを意識から外していた。興味なさげに考え事なんかしている。


ん? と呼びかけに首を傾げて俺を見て、俺の視線を追ってテレビを見て、未だ爽やかに話している格好良い俳優を見て、一つ、ゆっくり瞬きをした。


「ああ、ごめん。消すね」


あっさり了承してくれた彼女に戸惑う。え、見たい番組あったとかじゃないのか。


あれ、などと訝しむも、隣の彼女はリモコンを取り上げている。


消してくれると言うのだからまあいいかと思い直して、頷いた。


「うん、早く」

『これで快適! さあテレビの前のあなた、ぜひご購』


ポチッと本当にあっさり消した彼女は、もこもこの部屋着に包まれてもこもこの毛玉みたいに背を丸めながら、考え事を続行した。


テレビをつけた意図が分からなくて、挙動を目で追ってみる。


あれではただつけて消しただけだ。彼女はそんな無駄はしないはずなのだ。


しばらく見ている間ずっと、考え事をして微動だにしない彼女からは何も読み取れない。


相変わらず鉄壁の無表情。諦めて溜め息を落として、読書を再開する。


静かな部屋に、暖房が部屋を暖める音と、俺がページをめくる音だけが聞こえていた。