妬こうよ、そこはさ。

「その心は」

「いや、寒いと思う」

「そう」


即答した己の口が恨めしい。


反射であっさり流してしまったけど、今すごくチャンスだったんじゃないのか俺。というか考えるまでもなく明らかなチャンスだっただろ。


……何してんだよ。いや本当何してるんだよ俺。


今、頑張って、「夫として心配だ」とか「そんな恰好して欲しくないなって思った」とか言う場面だっただろう。

せめて、早く帰ってきて、とか、待ってる、とか。


……何で言えないかな。


いや、もし俺がそこで「嫉妬してるんだ。馬鹿だなって思う?(キラン)」とか言えるような男だったら、

そんな、ちょっとかっこつけで気障で素直で、だけど、ちゃんと彼女との仲を維持する努力ができる偉い男だったら、


少なくとも、どう見積もったって、こんなこじれたことにはなっていないに違いないんだけど。


……あーほんと、何で言えないかなあ……。


自己嫌悪に陥っていると、瞬きをした彼女が冷静に確認を取った。


「上着着たほうがいいかな」

「絶対。寒いよ」


ここぞとばかりに頷く。


コートを着て、せめて足を隠して欲しい。


一旦部屋に戻って一番暖かそうなコートを引っ掛けてきた彼女が、俺に見せるように目の前で一回転。


ちゃんと丈が長いやつだ。確認ののち了承を出すと、彼女は素直にその丈の長い上着を着込んだ。


照れや気恥ずかしさが一切滲まないその横顔に、思う。